ここ数年、関節リウマチの治療は大きく飛躍しました。
それは生物学的製剤が臨床使用できるようになったからです。
これまで不治の病と考えられていた関節リウマチに、もしかしたら「治癒」までもが目標にできる可能性がでてきたのです。
生物学的製剤とは一般には遺伝子組み換え技術などを用いて人工的に作成した蛋白製剤の事です。
関節リウマチの原因は未だに明らかではありませんが、白血球の1種であるリンパ球やリンパ球が産生する炎症性サイトカインといわれる物質が重大な役割を果たしていると考えられています。
そこで、リンパ球や炎症性サイトカインの働きを阻害する生物学的製剤が2007年からリウマチ治療に用いられるようになりました。
現在数種類の生物学的製剤が臨床上用いられていますが、これからも新しいものが薬剤として登場してくることでしょう。
投与方法は点滴や皮下注射で、インスリンのように自己注射も皮下注射ではおこなわれています。
通常メトトレキサートでも痛みや炎症が消えない患者さんや関節破壊が進行する患者さんに使用します。
発症してからの期間が長い患者さんでも日常生活での障害が軽減し効果が持続することも知られています。
また、発症早期の患者さんでは発症前と同じ生活を送ることも可能となっています。
全てのリウマチ患者さんが生物学的製剤の治療を受ける必要はありませんが、関節破壊を出来るだけ抑制し、
より快適な社会生活を送って頂くためには、生物学的製剤を含めた積極的な治療を行う事が推奨されています。
生物学的製剤の重大な副作用は感染症ですが、感染症は多くの場合使用開始6ヶ月以内に発症しています。
リウマチの状態の悪かった人ほど感染症の危険性が高くなりますが、生物学的製剤でリウマチが落ち着いてくると
感染症は起こりにくくなります。また、リウマチの進行した患者さんも危険性が高くなります。
したがって、あまりリウマチがひどくなる前に使用することが感染症予防の上では重要です。
生物学的製剤を使った方が良いのか(使ってはいけないのか)、どの生物学的製剤を選択するのか、
生物学的製剤の変更はどうするのか、現在のところはっきりとしたルールはありません。
個々の患者さんの状態を診て今までの治療の経過や合併症・副作用の危険性も含めて慎重に考慮する必要があります。
私たちはこれまで数百人の患者さんに生物製剤を使用した経験があります。
また、新薬を開発する治験でも多くの経験があります。
生物学的製剤に興味のある患者さん、使用に関して悩まれている患者さんは是非一度私たちにご相談下さい。